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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)8682号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、請求原因第一項および第二項の事実はいずれも当事者間に争いがなく、右事実によれば、被告は被告車の運行供用者として、本件事故によつて生じた損害を賠償すべき義務を負うものといわなければならない。

二、そこで本件事故によつて生じた損害について判断する。

(一) 訴外順太郎の得べかりし利益の喪失による損害

訴外順太郎が男子であつて、本件事故当時五七才であつたことは当事者間に争いがなく、<証拠>および第一〇回生命表によれば、五七才の男子の平均余命は原告らの主張する一六、七八年を下廻らないものと認められるから、訴外順太郎は本件事故に遭遇しなければ、なお、一六、七八年の余命があつたものと推認できる。

次に<証拠>を総合すれば、訴外順太郎は、昭和二七年一二月設立された紙製品の製造、販売を営業目的とする訴外会社の設立に参画し同会社の資本金一〇〇万円のうち一〇万円を出資し、代表取締役社長は三〇万円を出資した甲府市の有力者河西俊夫が就任したが、訴外順太郎は専務取締役に就任し、以後本件事故にいたるまでその地位にあつて会社業務の重要部分を担当していたこと、訴外会社では取締役は数名いるが、設立以来、死亡の場合の外概ね再任を重ねていること、訴外順太郎の昭和三五年度の給与総額は金三九二、六〇四円であり、同人の死亡による後任者小畑三子男は当初月額五万円、昭和三九年一一月頃は金六万円の給与を得ていたことなどの事実が認められる。

右の諸事実を総合すれば、訴外順太郎は本件事故に遭遇しなければ、同訴外人が六五才に達する昭和四三年末まで前記訴外会社において稼動可能であり、その間(1)昭和三六年二月から昭和三七年末までは年金三九二、六〇四円、(2)昭和三八年一月から昭和四三年末までは年金五七六、〇〇〇円の各割合による収入を得られたものと推認できる。原告らは余命期間全部について稼動可能と主張するが、前記認定事実によれば、訴外順太郎は名目的な役員ではなく、実際に業務を担当する取締役であつたのであり、経験則上認められる老令者の労働能力などから考えると六五才時をもつて蓋然性の高い稼動終了時期と認めるのが相当である。

そこで訴外順太郎が右収入を得るにつき必要な費用につき判断する。原告らは成立に争いのない甲第八号証(総理府統計局作成昭和三六年度家計調査年報)によつて認められるところの昭和三六年度における東京都の勤労者世帯の一ケ月平均消費支出額金四一、四八五円を右世帯人員数四、一三で除した世帯員一人当りの一ケ月平均消費支出額金一〇、〇四四円を一二倍した金一二〇、五二八円をもつて年額生活費とし、これに各種保険料、所得税額を加えた額をもつて収入を得るために必要な費用と主張するが、右生活費推算方法は世帯主たる訴外順太郎の生活費算出方法としては、世帯主の生活費は他の世帯員の生活費に比して多いことが経験則上明らかであるのにこれを均分した不合理性はあるものの、一方前掲甲第八号証によれば、前記勤労世帯の月収入額は金七八、六三九円とされており、前記認定の訴外順太郎の収入額を相当に上廻るものであり、原告らが自認する各種保険料、所得税額をも加えた合計額は結局訴外順太郎の収入を得るための費用として相当であると認めることができる。なお、被告は訴外順太郎の生活費を月額金二五、〇〇〇円と主張し、<証拠>によれば、訴外順太郎は妻原告あきを東京に残し、甲府市内のアパートを賃料月額約二、五〇〇円で借りて単身生活をしており、時々二〇才位の女性(被告の主張する特別関係のある女性とまでは認定できない)がアパートを訪れていたことが認められるが右事実のみでは前記認定額を左右することはもちろん、被告の主張額を認定するに足るものでもなく、他に被告の主張する額を認定するに足る証拠はない。

したがつて、前記認定の収入額から収入を得るために要する費用を控除した額が訴外順太郎の純利益となるところ、損害発生時の現価に換算するため、ホフマン式計算方法に従い年毎に民法所定の年五分の割合による中間利息を控除すると別紙第二表のとおり金二、三五三、八五四円となる。(吉岡進 岩井康倶 梶本俊明)

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